過去のイベント


2024年5月9日(金) 茨木・おにクルブックパークを見学

 

 大阪府茨木市に、昨年11月末に開設した図書館「おにクルブックパーク」へ行ってきました。

JR茨木駅から10分、阪急茨木市駅からも10分、丁度二つの駅の間にあります。市役所のそば、開放感ある場所に立地してるちょっと変わった名前の図書館です。

“おにクル”? 従来の公立図書館は、中央図書館とか〇〇北図書館というように地名および方角を示す館名が多いのですが。それからして従来とは違った図書館かなと期待しながら入場しました。 

      

 コンサートホールも併設された立派な建物です。受付で写真の許可を願い出ると、ニコッとして「来場している方の顔が映らないようにお願いしますね。」とその旨が記載してある利用案内も渡してくれました。

2階から6階が図書館。館内は広々としており、北面はガラス張りで明るい空間を作っています。上層階の屋外テラスからは市内が一望でき、ガーデンテーブルが置かれています。

 

私の図書館のイメージは、せまい通路の両側は本がギッシリ。そこに佇むと、何故かトイレに行きたくなる(最近知ったのですがこれを青木まりこ現象というらしいです)、というものでした。ここではそれが全く無縁。

エスカレーターがフロアの真ん中をぶち抜きで行き来し、研修スタジオ、コンサートホール、そしてプラネタリウムまで!境界無く登場します。

 

とてもゆったりと本が展示されています。ぶらぶら歩いていたらいつの間にか図書館、って感じです。私の見てきた中で、本の密度がいちばん低い図書館じゃないかな。それでも蔵書10万冊。親子連れが楽しそうにしています(写真では来場者が映らないようにしているので、がらんとしてるみたいですが、実際はにぎやかです)。

その向こうのガラス張りスタジオでは、ジャズダンスのレッスンがおこなわれています。もちろん資料を真剣に調べている人も。

茨木に住む私の娘親子は「ふらっと遊びに行ってその“ついで”に絵本を借りてくるよ。」とのこと。従来の図書館の概念が覆ります。

 

 

ちょっと堅苦しいことを書くと、戦後公立図書館は、開かれた図書館にすべく、「中小レポート」(1963年)を皮切りに、「市民の図書館」(1970年)、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(2001年)と、日本図書館協会及び文科省から報告、告知された”あるべき姿“(=地域の情報の拠点・多様な学習機会の提供等)に対応するために、長い間、試行錯誤の努力がなされてきたと思います。”おにクル“はそれを具現化している図書館なのかもしれません。楽しみな図書館が出来ました。

(しー)

 


2024年4月15日(月) 大津・石山寺にて源氏物語に思いを馳せる

 

滋賀県大津市にある石山寺へ行ってきました。JR石山駅で京阪電車に乗り換え、終点の石山寺駅へ。そこから瀬田川右岸に沿って南下。この川が宇治川に通じているんだと思いながらのんびり10分ほど、石山寺に到着しました。

実は今回は文学散歩が目的ではなく、西国33所巡礼(昨年末決心)の一環としての西国13番札所参拝にやってきました。小雨降り注ぐ河畔を歩いていると、数メートル置きに設置された綺麗な彩色の幟が目につきます。

       
   


「紫式部の筆はしる 源氏物語誕生の地 大津」とあります。その下に紫式部と思われる十二単の女性のイラスト。不覚にも“源氏物語の誕生”が大津とは全く知りませんでした。

二年前に瀬戸内寂聴さん現代訳の十巻を読破し、今は大河ドラマ「光る君へ」を藤原姓が続々出てくるのに辟易しながらも欠かさず観ている源氏物語ファンとしては興味津々です。

 

境内は桜が満開、小雨に散ることなく咲いてくれています。まず本堂に西国33所巡礼の参拝をしみじみと。と、その本堂の片隅に東向きに窓が開けた六畳ほどの部屋が区切られていました。

 “紫式部源氏の間”と木札が掲げられています。中には等身大の紫式部と思われる御所人形。ここで源氏物語を執筆していたようです。

正直なところ、「暗くて目に悪そうなところで書いていたんだ。」というのが第一印象。

傍らの説明書きには「寛弘年間紫式部 この間に参籠して新たに源氏物語を作る。先ず須磨明石二帖を書く。」とあります。

あれ、第一帖は桐壷のはず。須磨明石はちょっと後ではなかったっけ(スマホで調べると第十二、十三帖。)入り口でもらったパンフレットには「本堂から外を眺めると湖面に月が映っており、その風景を見て「源氏物語」の着想を得たと伝わります。」ん…、時系列が良くわからない…

 

 

この場所で紫式部さんは、例えば山崎豊子さんが「華麗なる一族」執筆のために志摩観光ホテルの一部屋に缶詰めになったと同じ状態だったのでしょうか。それもまず十二帖から書き始めた!? 疑問と興味が次々と湧いてきます。”伝わります“が大阪弁の“知らんけど”と同意語に思われてきました。

なにぶん1000年以上の前の出来事。石山寺の境内にたたずむと当時の状況が自由な発想で飛び交ってくれます。さあ帰ってからもう少し調べてみよう。新たに探究のきっかけを作ってくれたことに感謝し、いつの間にか雨の止んだ石山寺を後にしました。


2024年3月13日(水) 熊本・夏目漱石「草枕」ゆかりの地を訪ねる

 

<<まちかど図書館3388の司書であるしーさんが、九州から出張版文学散歩の記事を送ってくれました。旅情をみなさんにも、おすそ分けします。>>

 

熊本県玉名市にある小天(おあま)温泉に行ってきました。漱石「草枕」の舞台となったところです。熊本駅前からバスに乗り、熊本市街を抜けるとミカンの産地河内町、山の頂上近くまで段々畑の様に植えられている壮観な景色が開けます。やがてバスは海岸沿いを走り小天温泉に到着、約40分。県道沿いのバス停から丘を登っていくと、みかんの木越しに有明海が展望できます。

「草枕」の有名な冒頭、「山路を登りながら、こう考えた。」からすると舞台は山の中と思っていましたが海がすぐ近くに見えます。後述の草枕交流館の方に聞いたところ、漱石は熊本から直進し山側から小天温泉に徒歩でやってきたとのこと。グーグルマップで調べてみると約4時間。ちなみに私の乗ったバスは海岸沿いを迂回してきました。

 

5分ほど歩くと旧前田邸に到着しました。漱石が逗留した宿です。今は無人、一部の建物だけが残っています。漱石が逗留した部屋、そして那美さんとスクランブルした浴場は現存しています。浴場は入り口から階段で数メートル下っており、そこに立つと小説の場面が目に浮かんできます。

 

そこから少し丘を登っていき、2006年にオープンした草枕交流館へ。映像ホールで10分余りの草枕紹介映像を観賞。忘れかけていた小説の舞台が次々によみがえってきました。そうか、オフェーリアの話もあったっけ。映像終了後、漱石が熊本から歩いた道のりの説明を受けました。

「眼の下に朧夜の海がたちまち開ける。急に気が大きくなったような心持である。漁火がここ、かしこに、ちらついて、遥の末は空に入って、星に化けるつもりだろう。」

と、漱石史上もっともロマンチックな文章(と、私は思っている)を書いた舞台である観海寺は雲巌禅寺がモデルといわれています。そこにもぜひ行きたかったのですが、ここから7キロ約2時間、時間と体力両面から断念。ただ、この交流館辺りからでも有明海はよく見えます。昼間だから漁火は見えないものの、漱石もこの海を見ていたんだと思うと感慨深い思いになりました。交流館の方によると、漱石は正月旅行でやってきた。みかんがいっぱい実をつけ「さながら桃源郷のようだ」と居心地の良さを表現したとのこと。みかんだから“黄源郷”かな。今は2月、黄源郷の気配を残す小天温泉を後にしました。(しー)

 


2024年2月21日(火) 「秋の文学散歩( 6 )  ブックホテル&京都国際マンガミュージアム」

 

<<年は明けましたが、本に関するスポットや文学ゆかりの地訪ねる「秋の文学散歩」。最終回はスタッフの千葉さんが登場します。>>

 

 

今回、千葉は11月12日から1泊2日で、大阪から京都までの、少し長めの秋の文学散歩に出ることにしました。

まず、一万冊のマンガがあるというブックホテルの「ザ エディスターホテル京都二条」に泊まり、翌日そのホテルから15分ほどの距離を歩いて、京都国際マンガミュージアムに行ってくるという、マンガ漬けの2日間です。

 

ホテルは、二条駅からすぐの大通り沿いにあり、入るとすぐにロビーに1万冊のマンガの本棚がお出迎え。10冊ずつ借りることができ(受付でバーコード処理してくれる)、飲み物(無料)を取って、すぐマンガをカゴに10冊入れてお部屋にこもりました。

ラインナップは、続き物が多い印象で、「気になっていたけど、全部揃えるのは大変そう」なマンガで、嬉しかったです。

 

無人島好きな千葉は「7seeds」、連れの小学生は「葬送のフリーレン」、どちらも長めのマンガをチョイスし、ひたすら無言で読書タイム。

とはいえ、一晩で巻数の多いシリーズをすべて読みきるのは難しく、後ろ髪をひかれながらホテルをチェックアウトしました。

 

雨の中、京都国際マンガミュージアムに、昼前に到着。障害者手帳の提示で、入館料は無料でした。館内は1フロアに必ずバリアフリートイレがあり、車いすユーザーの千葉には重宝しましたが、その日は私以外の車いすユーザーは見かけませんでした。

学校の跡地のようで、天気が良ければ中庭に出られます。様々なところに本棚があり、マンガを自由に手に取って読むことができます。

1階には子どもコーナーがあり、子どもと書いてある字を見て、小学生はすぐに走っていき、好きな絵本や興味のある漫画を探して、床に座りこみました。ふだん、書店で見かけない制作年の古いマンガも手に取っていました。

 

昼ご飯には、少し苦労しました。ミュージアムの隣の喫茶店はバリアがなく良かったのですが、昼ご飯時は受付を断られるほどの混み具合でした。壁に漫画家さんの絵やサインがあり、人気のようでした。周りで段差がない食事できる店を探しましたが、見つからず。どれも微妙に2段くらい段差ありです。

やっと見つけた喫茶店で、中に畳んで車いすを入れさせてもらい、昼食にありつけました。

 

午後には展示を見ました。アフリカのマンガ展をやっており、興味深く拝見しました。3388所蔵の『アフリカ少年が日本で育った結果』の、星野ルネさんの展示パネルもありました。

各漫画家の手の塑像やサインや絵が、館内の壁や展示室にあり、楽しく拝見しました。紙芝居の読み聞かせもやっており、時間が合えば見たかったです。

 

たくさんのマンガを知る機会になり、とても楽しく一日を過ごせました。とても寒かったので、防寒はしっかりと対策が必要です。あと、国際マンガミュージアムは長編マンガの巻数は揃っておらず、ブックホテルやマンガカフェの代わりにはならないのでご注意を。

 

旅行中は簡易電動車いすでの走行でしたが、ミュージアム内はほぼ問題なく走行でき(2階の一部は、う回する必要あり)、バリアにも配慮があると感じました。手塚治虫の火の鳥の像が、小学生にとってはとても怖かったみたいです。 

 


2023年12月13日(水) 「秋の文学散歩( 5 )  東大阪市・田辺聖子文学館」

 

<<本に関するスポットや文学ゆかりの地をスタッフが訪ねて報告する「秋の文学散歩」。更新がゆっくりだったため、世間はすっかり冬景色ですが……。第五回は秘書(?)のアオキさんが登場します。>>

 

 

大阪樟蔭女子大学内にある「田辺聖子文学館」は、卒業生である作家の文学的偉業を称え、地域文化の推進に貢献することを目的として、2007年に開館した施設です。電車でのアクセスは、近鉄線「河内小阪駅」が最寄りで、JRおおさか東線の「JR河内永和駅」からも徒歩で行くことができます。

 

大学近くの駐車場に車をおき、長瀬川の流れに沿って正門へと向かいました。人工的に整備された川の流れはそれなりに速く、澄んでいます。ベンチに腰掛けるご夫婦の姿がなんともあたたかに見えました。

守衛室で手続きをして図書館の入口へと向かいます。階段を上がって少し暗い廊下を進むと正面が大学図書館で、その左手に「田辺聖子文学館」はあります。

 

平日の午後で、来館者は筆者一人という状況は少し落ち着かない気持ちになりました。内部の様子は写真(許可を得て撮影)と、学生さんが編集された案内小冊子「特別企画展レポート -自伝的作品と習作でたどる田辺聖子の青春って?―(2023220日発行)」より引用しながらご紹介します。

 

エントランス部分には「田辺聖子年譜」があり、誕生から現在までの軌跡が一目でわかります。その奥には田辺聖子作品が壁いっぱいを埋め尽くす「田辺聖子 文学ウォール」が。刊行順に並べられた作品に、ファンの人たちはたまらないでしょうね。

 

 

まだまだ興味深い展示物や工夫されたコーナーがたくさんありますが、レポートはここまでとさせていただきます。後は現地をお訪ねになってお楽しみください。なお日曜、祝日と大学がお休みの日は休館となっていますのでご注意ください。

  

 

“いい友達を持っている、というのが、人間の一番のお手柄。”(田辺 聖子)

 

 


2023年12月13日(水)「秋の文学散歩( 4 ) 四天王寺・秋の大古本祭」

<<本に関するスポットや文学ゆかりの地をスタッフが訪ねて報告する「秋の文学散歩」。今年の秋があまりにも短く名残惜しいので、もうちょっとだけ続きます。第四回は秘書(?)のアカギさんが登場します。>>

 

このところ、まちかど図書館3388のスタッフの頭を悩ませているのは「棚問題」です。開設以来順調に活動をしてきた当館は、ありがたいことに皆さまからの寄贈を受けて蔵書数が4000冊以上となりました。これからも読書スピードが速い会員さんのために、新しい本を受け入れたい。人気のジャンルやシリーズを押さえながら、多方面にバランスよく蔵書を揃えたい。

しかしスペースには限りがあり、これまでずっと見送って来た書庫の整理に手をつけねばならない時がやってきました。重複本や状態が著しく悪くなっているものは、リサイクルや古書市場に回ることもあるかもしれません。

 

そんなことがホットな議題としてミーティングで話し合われる中、私は四天王寺境内でおこなわれた「秋の大古本祭」に行ってきました。秋空の下にはテントが立ち並び、本棚を退場した本たちが第二の生の場を求めて集まってきています。

そこではたくましく生き続けている本たちの姿を目にしました。「売値の半額」の値札がつくとは、たいしたものだ。

飛ぶように売れているとは言えませんが、数冊の本を小脇に抱えてさらに興味があるものを物色する人たちがあちらこちらにいました。読書好きだけではなく、なにかの調査や研究のための資料をもとめての来場も多いのではないかと思われました。(アカギ)

 

 


2023年12月3日(土) 「児童文学を読もう」の読書会

 

児童文学をテーマにおすすめの本を紹介しあう読書会を開催しました。今回は見学者も含めて、7名の方に参加して頂きました。

 

最初に企画のアイデアを出してくれたスタッフの千葉さんが、朝ドラ「花子とアン」に登場した作品を中心に、児童文学の歴史をレクチャーします。

 

この分野に、情熱のある千葉さん。自分の本棚から持って来たカバーの美しい絵本を机に並べながら、「子どもの頃に読んだ作品で、印象に残っているものはなんですか?」と問いかけます。

 

多世代のメンバーが各々記憶を手繰りよせ、教科書に載っていた宮沢賢治の童話や、エルマーの冒険、幼稚園で申し込んでいた月刊絵本のシリーズ、NHKテレビ絵本のルドルフとイッパイアッテナなどの名前が上がりました。

言葉の学び初めに読んでもらったものというのは、いつまでも忘れないものです。

 

読書会では、「セロ弾きのゴーシュ(宮沢賢治)」「たいようのおなら(灰谷健次郎編)」「54字の物語 怪(氏田雄介)」「小さな手袋(内海隆一郎)」「りんごかもしれない(ヨシタケシンスケ)」「だるまちゃん(かこさとし)」他、多数の作品が登場しました。懐かしい名作もあれば、はじめて聞くものもあります。

 

小学生の参加者はちょっとダークな雰囲気の短編集が推しで、意味が分かったらゾッとする話をいくつか音読してくれました。冬に暖房のきいた部屋で食べるアイスクリームはやけに美味しかったりしますが、この季節のホラーも同じような取り合わせの妙。

 

「自分の発表は特殊なので、順番は最後に回して欲しい」とお願いしていたしーさんは、4歳のお孫さんの集中力が続くかぎり絵本の読み聞かせに挑戦した体験記を、紙芝居形式でユーモアたっぷりに語ってくれました。

 


2023年11月12日(日)「秋の文学散歩( 3 )  東大阪市・司馬遼太郎記念館」

<<本に関するスポットや文学ゆかりの地をスタッフが訪ねて報告する「秋の文学散歩」。第三回目はスタッフのみーさんが登場します。>>

 

小雨が降る中、司馬遼太郎記念館に行ってきました。

作家が生前に愛した庭は雑木林をイメージして作られたそうで、書斎の掃き出し窓に面しています。

執筆中の姿がそこにまだあるような気がしながら、さらに小道を進んでいくと、安藤忠雄が設計したコンクリート造りのモダンな建物があらわれました。

高さ11メートルの吹き抜けの書架には2万冊の蔵書があり、司馬遼太郎の世界を存分に味わえます。

 

施設員さんから教えていただいた、天井に現れた竜馬の顔に見えるシミ。

先にお話を聞いていれば、確かにそんな風に見えるから不思議ですね。

 

館内ではちょっとしたハプニングもありました。

若い猫が来館者の後を追い、凄い勢いで飛び込んで来て、施設員さんと追いかけっこに。

階下の展示室に行かれては一大事と、やっとのことで捕まえ、庭へご退出願いました。

 

併設のセルフカフェで、珈琲とともに休憩。入館料500円、喫茶代300円で非日常を味わえる近隣の文学散歩でした。

記念館ではさまざまな催しもやっているようで、12月中旬に桂南光一門会があるという案内をみかけて興味を惹かれました。

(みー)

 


2023年10月6日(金) 「秋の文学散歩( 2 )  宇治・源氏物語ミュージアム」

<<本に関するスポットや文学ゆかりの地をスタッフが訪ねて報告する「秋の文学散歩」。第二回目は司書のしーさんが登場します。>>

 

今日は宇治の源氏物語ミュージアムに行ってきました。
JR宇治駅から橋を渡って世界遺産宇治上神社のすぐそばにあります。
行く道の橋の上からのぞいた宇治川は流れが急です。

 

「物語の中でこの川を小舟で渡る場面がありますが、昔からこんな急流だったのですか?」
「はい、そうですよ。“ちはやぶる宇治”といわれているぐらいですから。」
あとでミュージアムのスタッフの方に尋ねると、ニコッとしてそう教えてくれました。

 

二十五年ほど前に開館したミュージアムは、ガラス張りの明るい雰囲気です。中に入ると、まずは源氏物語の時代の貴族の生活が、実物大の模型や人形で展示されています。
次の部屋には源氏物語全体のストーリーを図解したものがあり、特に宇治十帖だけで一つの部屋を設けています。

 

二年前に瀬戸内寂聴さん訳を読了していたので、復習しているような心持ちで楽しく見ることができました。
ミュージアムの奥まったところにある図書室は、源氏物語に関する蔵書が三千冊余。現代語訳の本やその時代の風俗を紹介したもの、厚さ十センチ以上もある研究書など、見ているだけで楽しくなります。

 

帰りがけ、ちょうど入り口に修学旅行生の団体が並んでいました。源氏物語の内容を知らないで入ったら、ちょっとちんぷんかんぷんかも。けど、これをきっかけに読んでくれたらいいなあ。

ここまで来たのならと平等院に寄り道し、雲中供養菩薩像を見学して帰ってきました。
(しー)

 


2023年9月25日(月) 「秋の文学散歩( 1 )  MoMoBooks(九条)に行く」

三枚の写真をコラージュしたもの。 上:MoMoBooks店内の写真。絵本読み聞かせ会のため、中央にくつ脱ぎの場所がつくられ参加者が座っている。 左下:MoMoBooksの外観。細い路地に看板が出ている。 右下:「まじょ魔女 おはなしの会」の案内が貼られている。

 

<<今回から数回にわたり、本に関するスポットや文学ゆかりの地をスタッフが訪ねて報告する「秋の文学散歩」シリーズを更新します。第一回目はHP更新係のカニが担当です。>> 

 

まだまだ残暑は続きそうですが、読書の秋がやってきます。以前から行ってみたかった九条にある書店・MoMoBooksさんを訪問しました。

町屋を改装したお店に到着すると、絵本の読み聞かせグループ「まじょ魔女」さんによるお話会が始まるところでした。子どもたちが、配られた駄菓子を片手に待っています。

 

「おや?よく見ると……カンフーうさぎだ!よく見ると……、次は何かな?ハブとマングースだ!」

 

発声の通った朗読が続く間にも読み手の膝に座ろうとする子、ピューイとにぎやかしに笛ラムネを吹く子、カラフルなチョコを渡そうとする子。自由です。

「はい、ありがとうね」と受け止めながら、動じずに絵本を読み続ける魔女さん。

 

昨年、当館でも絵本の読み聞かせ講習会が行われましたが、何よりも大切なのは子どもたちの爆発的なエネルギーに押し負けない、大人側のパッションなのだと改めて教えられました。そして、前の子の頭に隠れて「見えなーい」と不満をもらす子を見つけた時の、「こっちに座り。見えやすいで」というさりげない調整。

 

こんな風に子どもたちが本の並ぶ場所で歓迎されているというのは、当たり前のようでいて得がたいことです。なぜなら、書店や図書館、美術館、劇場に映画館といったカルチャースポットの多くが、「静かにできる大人」中心の場所になっており、親子連れや様々な事情で声や音を出してしまう人にとっては利用しづらくなっているからです。(もちろん、演出上の理由から静謐が必要な時もあるとは思うのですが。)

 

独立系の本屋さんだけあって、MoMoBooksさんの棚は選書が光っていました。一冊一冊の本が個人的な出会いだと感じられる魔法にかかってしまうのが、小さな書店の魅力だと思います。

人文系の良書や、映画や音楽の評論、挿絵の美しい絵本に加えて、個人が発行しているZineも置かれてあり、まだ読んでいない本の装丁に呼びかけられる喜びを感じます。

ちょうど探していた「われらはすでに共にある:反トランス差別ブックレット」と、太田明日香さんの「書くことについてのノート」を見つけて、個人的に購入しました。

小さな書店と、小さな図書館という違いはありますが、地域にマイクロなカルチャースポットをつくり、本に興味を持ってもらえるようなイベントを積極的に行っているMoMoBooksさんの取り組みには、とても共感できるものがありました。

  (カニ)


2023年8月5日(土)読書感想文教室

読書感想文教室に集まった子どもたちが机に座りながら、ボランティアの話を聞いている。

 

 

 

今年もまちかど図書館3388では、小学生を対象とした夏休みの読書感想文教室が行われました。

 

参加者は9名。すでに宿題の感想文を終えたが念のため自習に来たというしっかりものもおり、当日までに課題の本を読んで来られなかった子もおり、進捗がマチマチななか、ボランティアさんと一緒に進めます。

 

だけれど、お盆前のこの時期に感想文に手をつけようとしていること自体、すごいことではありませんか。みんな一億点満点。

 

ずいぶん前に、無計画な夏休みを送っていた小学生だったスタッフはそう思いました。


2023年7月22日(土) ミニ講座&読書会

読書会の参加者たちが、「おーい でてこーい」を順番に音読している。

 

七月の読書会は星新一のショートショートがテーマでした。企画をしてくれた司書のしーさんは、若い頃から星新一のファンで、「三編だけ」と決めてから寝物語に読むそうです。

 

共通課題は「おーい でてこーい」。もう一本は自由課題で、各自が好きな作品を選び読んで来ました。

登場した作品は、「声の網」「未来イソップ」「おみやげ」「ボッコちゃん」「生活維持省」「殺し屋ですのよ」「妖怪」「あーん。あーん」「星新一 一〇〇一話を作った人」でした。

 

「おーい でてこーい」は、こんな内容です。

ある日、社の下に大きな穴があいているのを見つけた村の人々が、社会にとって不都合なものを投げ捨てる場所として、それを利用するようになります。

つぎつぎと生産することばかりに熱心で、あとしまつに頭を使うのは、だれもがいやがっていたのだという人類にとっては、便利な話。

原子炉のカスや都会の汚物、実験動物の遺体に機密書類、果ては個人の日記帳などがどんどん穴に捨てられていきます。底なしに見えた穴は、最後には…………

 

星新一のシンプルな文体と、時代を感じさせないよう固有名詞を極力省いた作風のために、驚くほど現代の状況を言い当てた物語として読めるようになっています。

ラストは読者の想像力に委ねる形で終わっていますが、「結末はどのように解釈した?」「穴の構造はどうなってると思う?」と、参加者どうしで話になりました。

 

また、「星新一作品をいくつか読んでみたけど、先が読めてしまうし、ハマれなかった」という意見もあり、何が自分にとって面白いのか、あるいは面白くないのかを言語化する過程も楽しかったです。